物流ニッポン 取材記事(2011年2月24日)
トラック荷台を樹脂塗装 腐食防ぐ、全国展開視野 山口県の運送会社トラックディラー、塗装材料等の販売を行う会社が3年前から始めた、トラック荷台の床材に ポリウレア樹脂を塗装する試みが広がり見せている。下水道や地下排水施設などに使われてきたポリウエア樹脂を塗ることで、 床材の浸食を防げるなど様々な効果があることから、部分補修を含む塗装を中国地方と北九州トラック50両に施行してきた。 今後は全国展開も視野にある。 「これをトラックの荷台に応用できないか」 ポリマート(山口県周南市)の貞益隆 社長が、中国日産ディーゼル徳山支店 (現UDトラックジャパン周南支店)に話を持ち込んだのが3年前。御影運輸(八塚和弘 社長、周南市)の田中博文 専務が 「それは面白い。試しにうちのトラックに塗ってみてはどうか」と応じたのが始まりだった。以後、3社で話し合いながら改善を 重ねてきた。 ポリウレア樹脂は耐久性があり、摩耗に強く衝撃吸収性も高い。このため、貯水場の貯留水槽や沈殿化、ろ過池などにも 使われているが、トラックの荷台に応用しても、ドライバーの負担軽減など様々な効果があることが3年の間に証明されてきた。 トラックの荷台は上部に木材、下部に鉄板を敷いた二重構造で、洗車などで上から掛けられた水は逃げ場がない。これにより 木材はもちろん、鉄板も腐食し、鉄板にできた穴から雪道にまかれる塩化カルシウムが浸食してくることもある。また、木材は 大型車には南洋材の一種であるアピトン材、中型車以下は合板が使われるが、内部にこもった水分がしみ出して荷物を傷めること も少なくない。 これを防ぐため、上部に鉄板を張る手もあるが、重さがあるので積載量は目減りする。その点、ポリウレア樹脂は軽量で、これまで 運送会社の関心を集めるセールスポイントとなってきた。 ポリマートでは当初、上部の木材ポリウレア樹脂を塗る工法をメインに営業展開してきたが、最近は別の輸入腐食剤を車両の 下回りから鉄板に塗るサービスも始めている。大雪の多い昨今、荷台を上下から守ろうというわけだ。「最初は荷台の縦揺れ、 横揺れ、ひねりに対応できるか心配だった。とくに、ひねりは亀裂につながりやすいと危惧していたが、3年使ってOKと判断 した」と、ユーザー側の立場でもある御影運輸の田中氏。鉄板張り以外の長距離車両のウイング車7両にポリウレア樹脂を採用した。 田中氏は「板張りの荷台はささくれて、隙間に異物が混入したりする。ポリウレア樹脂に変えてからは、高圧洗浄機で汚れを 流してモップで水切りするだけ。10分程度で終わり、翌朝一番で次の仕事に取り掛かれるようになった。若手の人材不足で ドライバーの労働環境整備は急務。できるところからやっていこうと協力した結果、労働時間の短縮につながっている」と話す。 さらに、「将来はこのような方法で荷台を長持ちさせ、シャシーだけ取り換えて、償却期間を15〜20年に延ばしていく必要が あるのではないか。当社はウイング車に採用したが、平ボディー車にはもっと需要があるはず」と、業界全体のコスト削減効果 にも期待している。 ポリマートでは既に特許を出願中だが、ポリウレア樹脂の製造元である保土谷化学工業、保土谷バンデックス建材とともに、 内容を追加して新たに共同出願している。 また、マニュアルなどの準備を進めており、UDトラックスを窓口に全国展開していく計画だ。 なお、中国・北九州以外の地域でも保土谷バンデックスが施行業者の団体と連携してサービスを提供できるという。